【ヒロアカ】手のひらのぬくもり※トリップ【相澤/轟/爆豪】
第1章 #1 眠・謎・力
私を腕に抱えながら爆発を起こしつつ移動しているその少年は、私が何か口にしたのに気づき、イラついた口調で答える。
「あぁ!?なんだ?なんつった?聞こえねぇ!!!」
そりゃそうだ。こんな爆発しながらなんて聞こえるはずもない。
でも…この背中…この頭…きっとそうだ!!
彼の左肩の上に”くの字”状態で抱えられてしまっているため、背中と後頭部しか見えないものの、鼻につくニトロのにおいがまさに”確証”へと導いた。
「あのっ、あの!!ばっ…爆豪?ばくっ…」
爆発の衝撃で言葉が途切れ途切れになる。
なんとももどかしい…
いやまて…それよりもさっきのは…!!!
思い出したように頭をぐいっと持ち上げ、視線を前に向ける。
重心が傾いたことに、少し驚きつつも、少年は走り続ける。
「あっ…ぶね!てめ…急に動くんじゃねぇ!落とすぞ!!!」
そんな少年の荒げた声に耳を貸さず、意識を前に向けて”泥”を探す。
(あれは…きっと……そうだ!!)
ーーーーー”ヴィラン”ーーーーー
アニメでみたその敵の総称を、ここでやっと思い出す。
知っている。あれを。
あれは確か…まさか…
頭をフル回転させながら、嫌な予感を振り払うように周りを見渡す。
背中にじんわりと汗をかいているのがわかる。
少年の熱か、はたまた私の嫌な汗か。
(どっちだっていい…今はそんなことより…あれを探す!!!)
ビルの陰、路地裏、歩道、空。
思いつく限りをぐるぐるを見渡す。
(どこに…どこにいるの?)
もし記憶通りならあれは…この先の展開は…!!!
いやでもあれって‥‥入学前の話じゃ・・・?
嫌な予感が増していくなか、ぐんっ!と腹部に力が入る。
みぞおちがフワッとする感覚。
まさにジェットコースターの落下時のような感覚だった。
「っ!!!!」
突如、少年が進行方向と逆に爆発をしたのだった。
ふわりと上空に飛び上がり、”何か”を避けた。
(背中を向けていてわからない…でもこれは…?)
少年の、私を抱える腕に力が入る。
ぐっ、と苦しくなるのを抑え、背中越しの”何か”に意識を向ける。
「ねぇ、ちょっ「うるせぇ!!!!」」
私の言葉を制すように、集中を前に向ける少年。
彼のあまりの言葉の強さに、言葉を飲み込んだ。
ーーーー”何か”がくるーーーー
私は思わず歯を食いしばった。
