【ヒロアカ】手のひらのぬくもり※トリップ【相澤/轟/爆豪】
第3章 #3 影・術・夢
本当に理解ができない。
何言ってんだこの女。
「何言ってんだ?」
俺は思わず眉間に力をこめる。
嫌悪、ではなく、呆れ。これに近かった。
年頃の姿をした女…それと一緒に寝ろと?
それのほうが余計に疲れる。
「えっと…」
後には引けぬ。そんな顔をして俺の隣の椅子に座る女。
「私も、あなたも、ベッドで寝てほしい思いがあるじゃない?だから、双方プラスになるところを考えた結果だったんだけど…。」
本気で言ってるのか…。
どういう神経して…
いや…
この女は平気で人に触る…
そこから考えるに、男女の分け隔てのない性格、この言動。
納得はいく。
だがしかし、ダメなものはだめだ。
まるで、わかってない。
「だめだ。」
「なっ…しょ、消太!!!」
なんで!と言わんばかりに高崎が俺の腕をつかんでくる。
駄々っ子かお前は。
俺は昔からガキは苦手なんだ。
けだるそうに高崎から目を逸らす。
「触るな。離せ。」
「だ、だめっ!一緒に寝るって約束したら離す!!」
(だからその約束おかしいだろ。)
そういうと、高崎は、握った手に力を籠める。
俺の腕が少し締まっていくのを感じた。
刹那”なにか”が俺の中を巡った。
「!?」
ほんの一瞬、あの時と同じ感覚だった。
あの時も確か…こいつは俺に触れた。
なんだ…?
思わず高崎に目をやる。
「えっ、あ‥なに?」
急に目があったことに驚いたのか、高崎の手が緩んだ。
その隙に掴まれた腕を振り払い、立ち上がった。
「あっ…もう!!」
惜しかったのに、という顔で腕を掴みに立ち上がる高崎。
惜しいも何も、身長差がありすぎる。
30cm近いその差は、伸ばした腕が届くはずもなく、空を切った。
「この話は終わりだ。とにかく、今日お前はベッドで寝ろ。以上だ。」
そういって俺は、目線を下げ、高崎の頭をくしゃくしゃと触ると、背を向けて風呂場へと向かった。
背を向けようとしたとき、俺に頭を触られた高崎の顔が、少しばかり赤らんでるのが見えた。
なんて顔するんだ。
俺は、高崎の”女”を見てしまった気がした。
(俺は、教師だ。)