【ヒロアカ】手のひらのぬくもり※トリップ【相澤/轟/爆豪】
第3章 #3 影・術・夢
ーーー祥sideーーー
ダメだった…。
明日も仕事があるというのに、ベッドを奪ってしまうことになるとは…。
申し訳なさすぎる…。
仕事で疲れ果て、ソファで寝てしまった翌日の疲れ具合がどれだけなものかは、社会人あるあるでとても痛感していたので、本当にベッドを譲りたかった…。
そして、去り際に触れられた頭に、ほんの少し感覚が残っているような気がして、私はそっと自分の頭に手を置いてみた。
(顔が熱いのがわかる…)
なでられたのとか、いつぶりだろう?
子供の時は、親に褒められるとうれしくて心があったかくなったのを覚えている。
でも大人になってから人に頭を撫でられるなんてことはなかったから、なんだか恥ずかしくなってしまった。
「はー…だめだ。寝よう。」
頭に置いていた自分の手をパタパタと顔を仰ぐように動かし、熱を冷ます。
少しため息をついて、私は諦めるようにベッドへダイブした。
枕に顔をうずめると、知らないにおいがした。
(そういや、他人のベッドで寝るなんてしたことないや。)
これが消太のにおいかぁ…なんてことを思いながら横になっていたら、急に睡魔が襲ってきた。
考えてみたら、病院から出た後にいろんなことがありすぎて、頭が追い付いていない。
(疲れたな…。)
その一言を思った瞬間、私の思考回路はプツリと停止した。
次に目を覚めたのは、デフォルト設定の着信音が鳴り響く朝だった。
ーーープルルルッ…プルルルッ‥‥ーーー
(うるさ…)
ーーープルルルッ…プルルルッ‥‥ーーー
(誰?なに…?)
頭上で鳴るその音に、寝ぼけながら手を伸ばし、止める。
数秒後、再び鳴り響く音。
ーーープルルルッ…プルルルッ‥‥ーーー
「あー…」
この音嫌い。
そんなことを思いながら受話ボタンを押すと、スマホの向こうから聞きなれた声がした。
「…もし「切るな。なんのためにかけてると思ってる。」…え?」
はい、すら言えてない。
そしてその声の主はまさしく消太だった。
寝ぼけていた意識が、すーっと起きていくのが分かった。
「消太…?」
「…何時だと思ってる。起きろ。」
「なん…え?」
小さなため息が聞こえた。
そうだ。私、雄英に行かなきゃいけないんだっけ。
なんで電話…あれ、スマホもってたっけ?
いろんなことが頭を混乱させていた。