【ヒロアカ】手のひらのぬくもり※トリップ【相澤/轟/爆豪】
第3章 #3 影・術・夢
ーーーー祥sideーーーー
目を見たものの、「なんだ?」と言いたそうなその顔。
「帰るんじゃないんですか…?」
「あぁ?まぁ…そうだな。」
煮え切らない回答。
まぁそうだなって…どういうこと?
そんなことを思っていると、相澤は、ふいと背中を向け歩き始めた。
(行くぞ、とかないのかな…)
今朝の感覚で分かったことがある。
私にとって雄英は大迷路の一つだ。
道を覚えるのが苦手な私には、この敷地は広すぎて出歩く気すらなくしてしまう。
(今ここで消太と離れれば一生迷子かもしれない)
そう思うと、不安になり、おいて行かれないようにと早足で相澤に近づいた。
次の瞬間、廊下の継ぎ目に足をひっかけ、体が前に傾いた。
「うわっ!」
ーーーグイッーーー
「っ!?…おい、気をつけろ。」
傾いたはずの体が、グンッと引き上げられた。
相澤の左腕が支えとなり、前に転ぶことはなかった。
体が一瞬にして浮いた感覚だった。
(男の人の力ってすごいんだなぁ…)
そんなことを思っていると、相澤が私の顔をみて言う。
「今のこのご時世だ。簡単に人に触ることは控えろ。誤解を生むぞ。」
なんのことだろうか?
私はぽかんとしてしまった。
今のはどちらかというと事故に近い。
好きで触ったわけでもないのだが、なぜそんな言われ方をしたのだろうか。
明らかにハテナマークを浮かべて相澤を見ると、ため息をつかれた。
「今の話じゃない。さっきの麗日の話だ。ここは年頃の連中もいるんだから、セクハラにならないようにしろよ?」
(頭を触ったことか!!)
セクハラ…考えたこともなかった。
もしや現実世界でもそう思っていた子はいたのだろうか。
そんなことを思うと、少し、悲しくなった。
「…気を付けます。」
「ん。」
それだけ言うと、また相澤は何事もなく前を向いて歩きだした。
(あれ…いつから見てたんだろう、私たちのこと。)
ふと気になったものの、聞かないことにした。
人には、ひっくり返されたくない話もある。
彼にとってはきっと今が”それ”で、面倒ごとの一つになる。
またあの不機嫌な顔をされても困るだけだ。
(笑った顔、見てみたいな。)
そんな思いが頭をよぎった。
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その後相澤について車に乗り、私は彼の家へと到着した。