【ヒロアカ】手のひらのぬくもり※トリップ【相澤/轟/爆豪】
第3章 #3 影・術・夢
‘’先生‘’の一言でピシャリと静まった空気は、さっきのわちゃわちゃした空間とは思えなかった。
「おい、何突っ立ってる。こっちだ。」
気だるそうに私の顔をみて手招きし、教団の横へと並ばせる。
そのまま私の顔を見るなり、ん、と一言だけ述べて前を見る。
(自己紹介しろ…ってことかな…?)
「あの…、高崎…高崎祥っていいます。よろしくお願いします。」
余計なことは口に出さない方がいい。
そう思って、名前だけを告げた。
なにより、横の圧が凄かった。
拙い自己紹介のあと、相澤が続いて話をする。
「高崎はヒーロー志望だ。お前らと同じくこの1-Aでヒーローを目指す。共に研鑽していけ。」
「はーい!」
元気な声で返事をするのは、芦戸ちゃんと…手袋…葉隠ちゃんかな。
あの子、アニメで見てたとおりに透過してる。
倫理的にoKなんだろうか…
お母さん目線でちょっと心配しちゃう。
「高崎、お前も席につけ。席は……あそこだ。」
指差しだ先には、ひとつの空席。
さぞ無理くり座席を作りましたと言わんばかりの奇数席。
その横には、冷たい空気を身にまとった少年がいた。
(彼は確か…轟焦凍だ…。)
間近で見ると余計にクールというか…後半に連れてみえる暖かさは、今は皆無だった。
(この頃の冷たさはツンデレの中でも最上級レベルだよね…)
そんなことを思い出しながら席につき、小声で話しかける。
「よろしくね、轟くん。」
すると驚いたようにこちらを見つめ、轟が口を開いた。
「ああ…よろしく。」
なんだろ。
なんか変なこと言ったかな…。
ひとまず、10年振りくらいの学生ライフは、ここで始まりを告げた。
――――轟side――――
教室がやけに騒がしい。
転校生がきた、とのことで、盛り上がっていた。
(うるせえな…)
横目で窓を見つめ、外の空の景色にのんびりと心を休ませていた。
先生は、転校生を席へと案内し、座らせた。
こいつ…思ったより小さいな…。
そんなことを考えていると、女が言った。
「よろしくね、轟くん。」
彼女は目をきらきらさせながらこちらを見つめてきた。
思わず返事をしてしまったが、ふとあることに気づく。
俺の名前を、知っている?