【ヒロアカ】手のひらのぬくもり※トリップ【相澤/轟/爆豪】
第2章 #2 住・生・楽
「ふむふむ…なるほどね。」
「…何か、わかるんですか?」
ひたすら私の話を聞いて、質問することなく聞き終えた校長は、うんうんと頷いていた。
その頭で、何かわかることはあるのだろうか。
そして、パッと明るい顔をして、こういった。
「キミの現実は、ここにあるよ。」
は?
「いや、何言って…」
「今君が生きてるこの時間は、まぎれもなく、現実さ。」
何を言っているの?
私は…睡眠剤を飲んで…
仕事をしてる普通のアラサーで…
あれ…今日は…何月何日?
私の家は…
受け入れられないくらいにシンプルな”現実”という言葉。
私の中の記憶が大きく揺れ動いた。
わからない。
まって…
私は…
わなわなと震える”何か”が出てきた。
この感情は…何だろう。
怖い?寂しい?つらい?
わからない。
でも…
”いやだ”
そう思った次の瞬間、パチパチ…と何かがはじける音がした。
火薬のようなツンとしたにおい。
「おい。」
再びハッとして意識を戻すと、苦しい。
気づいた時には、両腕が体の後ろに回され、顔が地面について倒されていた。
苦しい…
ぐっと締め付けられている”それ”は、まぎれもない捕縛布だった。
「なん、で…」
絞りだしたその声で、必死に状況を理解する。
「なるほど。わからないんだね。」
うんうんと、校長が頷いている。
地面についた私の顔のそばに、トコトコと歩いてくる。
「君は、感情のバランスが崩れると、個性が暴発するんだね。」
個性…?暴発…?
何を言ってるの?
「こ、せい…っ…」
苦しい。しゃべれない。
私の顔色を見て、静かに相澤は瞬きをした。
捕縛布は緩み、苦しさからの解放で私は咳き込んでしまった。
「げほっ…くっ…るし…。もう…何…。」
「ごめんね。痛かっただろう。でも、そのまま聞いておくれ?」
校長は続ける。
「今のまま行けば、君は要注意人物。個性もわかってない、世に出てはいけない人間さ。」
「だから…
雄英に、入らないかい?」