【ヒロアカ】手のひらのぬくもり※トリップ【相澤/轟/爆豪】
第2章 #2 住・生・楽
オールマイトといくつかの可能性を話し合ったあと、俺は高崎の入院先へ向かった。
この数日、特に大きな騒ぎをおこすことなく治療を受けたと、医者から報告を受けている。
変な動きを見せれば、見張っていたヒーローたちが動く予定だったが、その様子もなかったため、最終日の朝には監視から解放されていた。
数日ぶりにきたその病室をノックすると、返事はない。
寝てるのか?
静かに部屋をあけると、そこには、入り口に背を向け、うつむきながら荷物をまとめている高崎がいた。
(いるんじゃねぇか…)
ため息をつき、頭をかいて、女へと近づく。
「帰りたい。」
そう呟いたのは、聞き間違いじゃなかった。
足を止め、彼女を見る。
家があるのか?
こちらに気づくことなく、ふっ、と笑う彼女は、続けて言う。
「どうやったら起きれるの?」
この前と同じだ。
まだこの女は「夢の中」だと思ってるのか?
数日寝起きを繰り返しているというのに。
合理性に欠ける。
全く気付く気配のない高崎に、俺は声をかけることにした。
この重苦しい雰囲気が、少し嫌になっていた。
「おい。」
女…高崎は、名前を呼ばれた犬のように、突然振り返って俺を見た。
なんだそのキラキラした目は。
俺の中の”何か”がザワついた。
「消太…」
俺の名を呼ぶその女は、先ほどの暗い雰囲気が嘘のように、明るくきらきらとした目で見たまま近づいてきた。
まぶしい。
「だからその呼び方やめろ。」
俺は年下にタメ口聞かれるのは嫌いだ。
なのにこいつは…この女は…
なんで名前を呼ばれても”普通”なんだ…?
初めてあった時からそうだった。
何かの違和感。
その女が、初めて俺の名を口にした時の、あたたかさ。
初対面の人間に感じることのない感覚だった。
名前を知られている驚きはあったものの、どこか名前を呼ばれるのがくすぐったくて、悪い気はしなかった。
過去に出会った女たちが呼んできた”それ”とは違って、なぜか…
なんだっていうんだ…