第3章 新しい生活
コンコンコン
『イゾウ兄さん、私。』
「ん、入りな。」
ガチャ
『ねぇねぇ、イゾウ兄さん!聞いてくれる?』
「ん?どうした?」
部屋に近づいてくる足音が妙に弾んでいた。
扉を開けて表情を見ると、こりゃまたご機嫌な菜々美。
朝怒っていたのが嘘のようだ。
『あのね、マルコ兄さんとの勉強会が終わった後、ナミュール兄さんに会えたの!
そしたらね、ナミュール兄さんは魚人で、今度海中散歩に連れて行ってくれるって約束してくれたの!!』
「ほぅ、ナミュールに会ったのか。よかったな。」
『うん!それにね、今日はご飯1人だったんだけど、他のクルーのみんなが話しかけてくれて、沢山の顔見知りの兄さん達が増えた!』
「そうか。…ククッ確かに、アイツら初日からオドオドしてたからなぁ。」
眩しいほどのキラキラした瞳で話す菜々美。
よっぽど嬉しかったんだな。
『そうなの?』
「あぁ。
俺たちは船に乗ったからにはみんな家族だからな。大抵は最初の宴で酒を浴びるほど飲ませたり、たらふく食い物食わせたりして仲良くなる。
だが、やっぱり今まで海賊やってた野郎共とかわいいかわいいお嬢とでは訳が違う。
みんな家族として仲良くなりたいとは思いつつも戸惑ってたんだ。」
家族として成り立ってる白ひげ海賊団ならではの絆の強さからか、交友関係が広がるのが早い。
俺もそうだった。
初めは受け入れ難かったが、一度馴染んでしまえばそれからは早かったように思える。
『へぇ。そうなんだ。
今度宴するときは私もいろんな人たちと話してみたいなぁ。』
「あぁ。それがいい。」
笑顔でそう語る菜々美。
少し、意地悪してみようか。
「今更だが、、、菜々美、勉強の時以外は俺と口聞かないって朝言ってなかったか?」
『……あっ!』
思い出したかのように声を上げる菜々美。
わかってはいたが、やっぱり忘れていた。
どうしようかと慌てている様が小動物のようでかわいらしい。
『…もういいの!今回だけだよ?許してあげるから、もう話していいの。』
「ククッ、そうか。」
予想外の返事に少し驚いたが、それ以上に話したいらしい。
俺は黙って妹の話に耳を傾けた。