第3章 新しい生活
「で、行ってみたい場所とかあるか?」
『うーん、この船、海賊船なんでしょう?
じゃあ、やっぱり甲板行ってみたい!海見たい!!』
「よしわかった!こっちだ!!」
行き先も決めないまま食堂を飛び出した私達。
最初の行先は私のリクエストで甲板になった。
「昨日の宴の時は夜だったからな〜。
海とか全然見えなかったろ。」
『うん。そもそも船だって思ってなかった。』
「この船デカいからあんま揺れねぇしな〜
しかも、今は比較的安定した海域に居るって航海士言ってたし。」
『へぇ、そうなんだ。』
サッチ兄さんとそんな会話をしながら、甲板へ向かう。
すれ違う人達は、困った時はすぐ言えよ!と声をかけてくれたり、妹は俺たちが守る!と意気込みを言われたり、、、
この船には優しくて暖かい人がいっぱい居るな、
「さぁ、ついた!」
サッチ兄さんが開けてくれた扉の先には広い甲板。
木でできた床や鍼は潮風に晒されていると言うのに綺麗なままで、日頃からの掃除や手入れが行き届いているのが窺える。
「菜々美、もう少し行ったら海見えるぞ、」
サッチ兄さんに手を引かれ、船のヘリに手をかけて外を見た。
『うわぁ!』
見渡す限りの海。
遠くに水平線が見えて、青い空との境目が白っぽく見える。
下を見ると、船が波を立てていて、力強く進んでいるのがわかる。
ふと、ヘリに背を預けて上を見ると、そこには大きな大きな3本のマスト。
風を受けて広がった帆は真っ白で、てっぺんはまるで見えない。
『おっきぃ…』
「だろ?俺たち自慢の船だ。
名前はモビーディック号。船首は鯨の形してる。
次島に上陸したら見せてやるよ。」
『ありがとう!』
外に出てみるとその巨大さが本当によくわかる。
1600人乗ってるって言うのも納得だ。
クジラの船首か、、、すごく気になる。
次の島に着くのが楽しみ!
「ここで菜々美!
甲板へ出るときの約束事がある!」
『約束?』
「あぁそうだ!よく聞けよ?
大事な話だ。」
サッチ兄さんの初めて見せる、少し真剣な瞳。
私はちゃんと向き直って兄さんの方を向いた。