第3章 新しい生活
「…ひとつ、思い当たる島と言えば、、やはりワノ国だな。」
「あぁ。
あの国は長いこと鎖国してるからねぃ。
イゾウが知ってるワノ国ももう17年前だ。
文化が進歩してると考えても不思議ではないよい。」
食事は主に箸で摂ると言った。
だが、違和感が拭えないのが、、、
「オヤジ、ワノ国は海外に情報が流れないように、ワノ国も外からの情報は入ってこないもんだったよな?」
「あぁ。その筈だ。」
「…だよなぁ。」
菜々美は和服の着方、所作を知らなかった、とイゾウがメモを寄越した。
さらに、ハルタの洋服や洋室はすんなりと受け入れていた。
イゾウの和室は非日常だと、懐かしい感じが少しする、と言った。
ワノ国独自の文化が発達したのなら、既存の文化の見覚えはない筈だ。
どう言うことだ?
マルコは酷く頭を悩ませていた。
警戒心からではない。
オヤジの加減した覇気でふらつき、力では絶対に勝てると分かってから、警戒などしてない。
例えアイツが敵だとしても、この船に乗る奴らなら誰でも制圧できる。
いや、そんなことはどうでもいいんだ。
記憶が、自分のことがわからない。
誰も知り合いがいない。
どれほど不安だろうか。
きっと愛する家族だっていただろう。
絶対、帰りたい筈だ。
医者として、兄として、少しでも早く記憶を取り戻してやりたかった。
そして何より、マルコは焦っていた。
あれだけ世間に疎く、争いを知らない菜々美。
仮にも海賊船であるこの船に乗せるには、危険が伴う。
戦いを見せたくない。
危険に晒したくない。
初めて会ったときに怖がらせてしまったことからの罪悪感か、菜々美に怖い思いをして欲しくない。
その思いに心が埋め尽くされていた。
マルコが不甲斐なさと悔しさに唇を噛み締めていると、この世で最も尊敬する男から声がかかった。
「マルコ、焦るな。
お前の気持ちもわかる。だが考えてみろ。
失った記憶は、必ずしもアイツにとって良い記憶だとは限らねぇんだ。」
「!」
マルコは弾かれたように顔を上げる。
「ゆっくり、菜々美のペースでいい。
記憶があろうが無かろうが、アイツは俺達の家族だぜ。」
そう笑いかけた父は先程までの焦った心を凪がせてくれた。