第3章 新しい生活
「さ、我らが長男に見せびらかしに行くかね。」
イゾウ兄さんはそう言って私に手を差し伸べた。
私はその手を取って、部屋から出て行く。
兄さんは私が歩きにくそうにしてるのを見て、歩くスピードを緩めて、和服を着てる時の歩き方とか、所作とか、そういうのを丁寧に教えてくれた。
「さ、着いた。」
コンコンコン、
「マルコー俺だ、」
「あぁ。入っていいよい。」
『失礼します。』
「あぁ、菜々美、待ってた、、、、、、よい。」
「ククッ、綺麗だろ。俺たちの妹。」
『ちょ、イゾウ兄さん、恥ずかしいから///』
イゾウ兄さんは私の髪を一房手に取ってサラサラと流す。
「あ、あぁ。…菜々美、綺麗だよい。
似合ってる。これは後でオヤジにも見せにいかなきゃねぃ。」
「そりゃいいな!
じゃ、俺は帰るよ。またな、菜々美。」
『あ、イゾウ兄さん!
あの、ありがとうございました。髪も、着物も、その、いろいろと。』
「ククッ、んな小さいこと気にするな。
まぁ、強いて言うなら、、、次に会う時までに敬語、外しとけよ。
じゃないと、、、」
イゾウ兄さんが私に近づいてきて、自然な流れで顎を掬った。
「この口、ふさいじまうかもしれねぇ。」
『なっ!////』
ペロリ、とイゾウ兄さんは自分の唇を舐めた。
私はあわあわと何か言おうとするけど、言葉は出なくて、きっと周りから見たら金魚のように口をパクパクしてるように見えるだろう。
「ククッ、ハハハハッ、、冗談だ。
すぐに真っ赤になるお嬢は可愛いな。
…それじゃ、また、な。」
イゾウ兄さんはあっさり私から離れ、人の悪い笑みを浮かべながら帰っていった。
私の顔の熱はまだ冷めそうにない。