第8章 次なる島は
ぼーっと外を眺めていた菜々美の頭がコクリと下を向く。
まるで赤子のような仕草に思わず口から息が漏れる。
コンコンコン
ガチャ
「マルコ〜皿受け取りに、、、なにそれ天使…?」
「静かにしろよい!」
座ったまま首を揺らす菜々美を見て、フランスパンは片手で口元を覆った。
記憶がないためか、普段から歳の割に幼い言動をする菜々美。
しかし、今の菜々美はいつにもまして幼く、兄心というか親心というか、、、そんなものを揺さぶる。
「はぁ〜かわいい。
食っちまいたくなる。」
「…お前が言うと冗談に聞こえねぇからやめろよい。」
締まりのない顔で菜々美を眺めるサッチ。
そう言う俺も今は顔が緩んでいるのがわかるので、サッチが菜々美に釘付けなのが正直都合がいい。
「…このままじゃ首痛める。
寝かすから手伝えよい。」
「あぁ。」
起こさないように優しく首の後ろと腰を支え、サッチが布団と枕をずらす。
その上にゆっくりと菜々美を横たえると、菜々美は少し身じろぎをして気持ちよさそうにふにゃりと笑った。
「…俺菜々美が可愛すぎて死ねる。」
「真顔で言うな気持ち悪い。」
ここまで来ると病気だ。
俺はサッチのフランスパンを叩くと、机に戻る。
「で、菜々美はなんでまた寝てるんだ?」
「薬のせいだ。」
「げ!?お前あのクソまずいやつ飲ませたのかよ!?」
「…仕方ねぇだろうよい。」
「可哀想に…」
本当に憐れみながら菜々美の額を撫でるサッチ。
…別に悪いことはしてないはずなのに、その風景になんだか本当に悪さをした気分になる。
「用済んだら出ていけよい。」
「用はあるぜ?
菜々美の顔見てること!
俺いつまでも見てられるわ。」
「それを用がないって言うんだ。
バカ言ってねぇでさっさとこれ持って厨房戻れよい。」
皿とサッチをまとめて放り出すと、俺はため息をひとつついた。