第8章 次なる島は
『ねぇ、兄さん、、、外行きたい。』
「外?」
ふ、と、思いついたように菜々美は言う。
『うん。風に当たったら少しはマシかなって、、、』
菜々美は未だに血色の悪い顔で弱々しくそう言う。
…確かに、風に当たりたい気持ちもわかる。
船酔いに近い状態で部屋の中にいるよりかは外の方がいくらかマシだろう。
…ただ色々と懸念点はある、、、
『…もう、あんなの嫌なの、、、』
あんなの、とは戻したことだろう。
簡単に察しがつき、その上そんな瞳で見られたら、、、断るなんざ無理だ。
「わかったよい。
じゃ、行くぞ。」
『うん。
…わっ!?』
「じっとしてろよい。」
『えぇ!?』
俺は菜々美を毛布にくるんでそのまま抱き上げる。
次は秋島だからな、風が冷たい。
『兄さん、私歩けるから、、』
「ダメだよい。絶対安静だ。」
『そんな大袈裟な…』
「医者の言うことは聞くもんだよい。」
俺はそのまま甲板への道を歩く。
ずっと寝てたんだ。急に歩いて転びでもしたら危ない。
甲板なら海に落ちる可能性も少なからずあるんだ。
そうなると俺は無力だからな…
こうして必ず守れるところに居てもらいたい。
不服そうな顔を見てクスリと笑みが溢れる。
随分と気力は戻ってきたようだ。
そんなことを考えながら、俺は甲板へ続くドアを開けた。