第8章 次なる島は
『コホッコホッ、、』
「…落ち着いたかよい?」
『…うん。』
戻してしまったことで更に疲労感が押し寄せる。
しかしそれ以上に、申し訳なさと恥ずかしさで頭がいっぱいで、マルコ兄さんの顔が見れない。
…こんな時にでも涙だけは変わりなく目に溜まっていく。
「…菜々美、本当に大丈夫だ。
俺たちはお前が思ってるほど気にしてねぇよい。」
『…』
そうは言うものの、私の気持ちは変わらない。
いっそのこと消えてしまいたいほどの思いが胸を締める。
『…本当に、ごめんなさい。』
自分の体調管理すらもできなくて。
迷惑をかけてしまって。
せっかく作ってくれたご飯も、あんなことにしちゃって。
口から出た謝罪の言葉でさえ、震えてしまっていて情けなくて仕方がない。
都合のいい長い髪で顔を隠す。
…結局私は俯くことしかできない。
「ウチは海賊船だ。
酒に酔ったバカが二日酔いで吐く姿なんか見飽きるほど見た。
敵船で汗やら血やらなんやらでぐしゃぐしゃになった顔面も嫌と言うほど見てきたし、俺たちだってそんなツラになったこともある。
それに、俺は医者だよい。
もっとひでぇ怪我や病気も診たことある。」
『…』
マルコ兄さんは私の顔を覆い隠していた髪を私の耳にかけた。
思わず、私はそちらを向いてしまう。
「そんなのに比べたらかわいいもんだよい。
体調くらい誰でも崩す。
そんな時は黙って頼ればいい。」
『…でも、』
「…粥のことは、俺が無理に食わせたからな、、、
苦しかったろ。ごめんな。」
『っ、ちが、』
「大丈夫、大丈夫だ。
何も気にすることはねぇ。」
マルコ兄さんはそう言って私の頭を胸に押し当て、ゆっくりと撫でてくれる。
トクン、トクン、と心地の良い心音が鼓膜を震わせる。
その後に呼応する様に、私の目からは止めどなく涙が溢れてマルコ兄さんのシャツを濡らす。