第8章 次なる島は
『うっ!』
「?菜々美?」
急いで辺りを見回す。
視界の端に、私の額に乗せていたタオルと、それを浸していた水の入った洗面器が目に入った。
バシャッ!
「うぉ!菜々美!?」
私は兄さんが近くにいたのはわかっていたけど、その中身を躊躇なく床にぶちまけた。
兄さんたちの服の裾が少し濡れ、急な私の奇行に驚いている顔が目に入る。
『ゔっ、、、ゔぇっ、』
「!菜々美!!」
『ぐっ、、がぁっ、、、、はっ、、ゴホッ』
たった今お腹に入れたはずのお粥が、胃酸に塗れて口から溢れる。
常に自分の体が揺れていることが気持ち悪くて、耐えられなかった。
「菜々美!」
『はっ、はっ、、っ!!、、、、くっ、あ、』
イゾウ兄さんとサッチ兄さんが私の名を呼ぶ中、マルコ兄さんは落ち着いて、私の背中をゆっくりとさすってくれる。
「菜々美。大丈夫だよい。
全部吐き出せ。」
『っ!』
今まで目に溜まっていた生理的な涙とは異なる、生温い涙が洗面器の中にボタボタと落ちる。
情けなくて、怖くて、申し訳なくて、恥ずかしくて、、、
全てがぐちゃぐちゃになった洗面器を、マルコ兄さんは私から取り上げて、新しいものに変える。
『ごめ、なさ、、』
「いや、俺の方こそ、悪かったねぃ、、、
無理に食わせちまって。」
『ちが、、わたし、が、、、、ぅっ!!』
話さなきゃいけないのに、込み上げて来る不快感、なんとも言えない波が私の邪魔をする。
「大丈夫。
誰もお前を責めねぇし、これくらいで何も思わねぇ。
話なら、後から聞いてやるから、、、今は自分の体休めて早く回復することだけ考えてろぃ。」
マルコ兄さんの言葉に涙が後から後から溢れる。
マルコ兄さんは水を手渡し、私に口を濯がせる。
気がつくと、部屋の中には私とマルコ兄さんだけで、2人の姿はなかった。