第8章 次なる島は
菜々美が目覚めて、水を渡した。
マルコの名をパッと思い出せなかった時は焦ったが、マルコが名乗ると納得した様に、たしかに『マルコ兄さん』と呼んだ。
俺のこともしっかりと『イゾウ兄さん』と呼んだことに安堵しながら、マルコが起こした身体の後ろにクッションをそっと置くと、部屋を出た。
まだ早朝の時刻。
船の中で起きているのは俺とマルコ、それから厨房の奴らくらいか。
ガチャ
「サッチ。粥作ってくれ。大至急な。」
「!菜々美目ぇ覚めたのか!!」
「あぁ。」
「はぁぁぁぁぁ、、、ほんっとよかった。」
その場にしゃがみ込むサッチ。
その気分もわからなくはないが、昨晩の苦しみ方を見ていた身としては手放しに喜べないのも事実だ。
「…昨晩一気に熱が上がってな。
だいぶ魘されてた。
今もまだ熱が高い。」
「…そうか。
だが、目ぇ覚めたってことはとりあえずは大丈夫なんだろ?
その、色々と。」
「多分な。」
マルコの様子を見る限り、恐らくは今はただの熱だろう。
薬飲んで大人しくしとけば治る。
「早く元気になればいいなぁ、」
「そうだな。」
俺たちがそんな話をしている間も、隣の鍋はくつくつと音を立てていた。