第8章 次なる島は
俺はそれらを用意して、マルコの隣に置く。
「菜々美、悪いが、、、服変えるよい。」
「…」
眠る菜々美にそう声を掛けると、マルコはぐっしょりと汗を吸ったシャツを脱がせて身体を拭く。
その顔は医者そのものであり、兄であり、菜々美のことを一番に考えた顔で、俺は何も言わずに変えの服を差し出した。
マルコと共に菜々美を着替えさせると、ベッドも隣のものに移した。
汗も吸っておらず、シワもない清潔なシーツの上に菜々美を寝かせ、俺たちはやっと一息つく。
「…恐らく、峠、というか、、、1番のヤマは超えたはずだよい。
起きた時、どうなってるかはわからねぇがな。」
「そうか。」
「…だが、一つ確実なのは、菜々美の記憶はちゃんと菜々美の中に眠ってる。
それも、大切な家族の記憶が、な。」
その言葉には何も返事をせず、俺は変えたばかりの菜々美の額のタオルをまた水に浸した。