第8章 次なる島は
コンコンコン
ガチャ
「ようマルコ。」
「…イゾウか。」
「菜々美の様子は?」
「相変わらずだ。
…もしかしたら菜々美自身、起きたいと思ってねぇのかもしれねぇよい。」
「…どういうことだ。」
「…それだけ夢の中が心地いいのかもしれねぇな。」
ここに居るよりも。
そう付け加えて頭をぐしゃりと掻くマルコ。
目覚める気配もない菜々美。
昨晩、少し熱が上がったらしいが、それでも身を捩る様子もなく、ただじっと眠り続けていた菜々美。
俺はそっとその頭を撫でると、マルコの方に近づく。
「マルコ、お前はそろそろ寝ろ。」
「…俺は大丈夫だよい。」
「もう2日寝てないだろ。
俺が診てるから少しは寝てこい。」
「いや、大丈夫だ。」
菜々美が眠っている反面、こいつは全く寝てない。
ずっと医務室に篭りきりで、飯もサッチが運んでくるまで食いやしねぇ。
心配なのはわかるが、このままじゃコイツまで倒れる。
「何か些細な変化でもあればすぐに呼んでやるから。」
そう言ってマルコを立たせる。
マルコは菜々美の顔をじっと見つめた。
「…本当に僅かでも反応が有ればすぐ起こせよい。」
「あぁ。」
バタン
やっと医務室から出て行ったマルコ。
…医者の不養生ってのはまさにこれだ。
俺はマルコの座っていた椅子に腰掛け、菜々美の髪を一房取って手の中で弄ぶ。
が、無常にもそれらはすぐに俺の指の間からサラサラと落ちてゆく。
「ハァ…」
なぁ菜々美、お前は今、どんな夢を見てるんだ?