第8章 次なる島は
何気なく廊下を歩いていると、右に左にと、真っ直ぐ歩けていない菜々美の後ろ姿が目に入った。
どうしたのかと思っていると、壁に寄りかかって立ち止まってしまう。
「菜々美、どうした、大丈夫か?」
そう声を掛けると、菜々美は俺の方を向こうと足を踏み出す。
が、その足は力が抜けたように膝から崩れる。
「菜々美!?」
ギリギリのところで抱き留めたのはいいものの、覚束ない足元に急に倒れたとなると、、、どう見たって正常じゃない。
さらに、
「っ熱い…凄い熱だ。
顔色も悪い。」
少し触れただけでわかるほどの熱さ。
そして真っ白な顔色。
いつもは健康的な色味のある唇も今は色がない。
額には冷や汗が滲み、目の焦点は合わない。
「すぐにマルコのところに行くからな。」
俺は医者じゃないからわからないが、ただの風邪でここまではならないだろう。
一刻も早くマルコに診せなければ。
小さな体を抱き上げて、なるべく揺らさないように急ぐ。
「菜々美、どこか痛むのか?」
「菜々美?」
返事がない。
さっきは声を掛けるとこちらを向いたから聞こえてはいるはずだが、、、
「菜々美!!」
腕の中の菜々美に目を向けると、その目は半分閉じかけていて、息をするのも辛そうだ。
「菜々美!菜々美!!」
何度呼んでも一向に目は開かず、むしろ閉じていく。
そして、完全に瞼が閉じたと同時に菜々美の身体から力が抜けた。
バン!
「オイ!人の部屋のドアをー「マルコ!菜々美が危ねぇ!!」
菜々美を抱いていて両手が塞がっていたが、何の躊躇いもなくマルコの部屋のドアを蹴破った。
当然マルコは驚きこめかみには青筋が浮かぶが、俺の腕の中の妹を見るや否やその眠たげな目を最大限に見開いた。