第8章 次なる島は
ふわふわする頭と少し火照った体を鎮めたくて、甲板に出る。
肌を撫で、髪を攫う潮風が心地良い。
兄さん達の約束で、看板にいる時はひとりで海の近くには行けないから、海は見えない。
でも、鼻腔を駆ける潮の香りだけで十分だ。
目を閉じて空を仰ぐ。
「あれ?菜々美じゃん。」
『ん?…あ、ハルタ兄さん。』
瞼の上に影が落ちて目を開けると、新聞を片手に持ったハルタ兄さん。
「この時間に甲板にいるの珍しいね。」
『うん、マルコ兄さんが今日は手伝いいらないって言ったから少し涼んでるの。』
「そんなに今日暑い?」
『暑いっていうか、、、なんかふわふわして浮ついてる感じがするから少し冷えた方が落ち着くかなって、』
「へぇ…」
『ハルタ兄さんも新聞持ってるの珍しいね。
何か面白い記事でもあったの?』
新聞は毎朝マルコ兄さんが読んでるのは見るけど、ハルタ兄さんが新聞広げてるのは見たことない。
「あぁこれ?
オヤジが読み終わってもう要らないって言うから貰ったんだ。
ほら、僕たち数日間海底に居たからさ、地上でなんか面白いことでもあったかな〜って気になって。」
『なるほど…そう言われると気になるな。
何か面白いことあった?』
「それがさ、グランドラインを凄い速さで駆け巡ってる海賊がいるらしいんだ。」
『それってやっぱり強いってこと?』
「あぁ、それは間違いない。
将来大物になるだろうってオヤジも言ってた。
歳は見た感じ菜々美とそう変わらなさそうだったよ。」
『そんな歳で海に出て仲間を率いて戦うなんて…凄いな。』
私には絶対無理だ。
「ハハッ、まぁ菜々美は女の子だし、それに海賊なんてやる奴はみんな普通じゃないから」
『ふふ、この船のみんなも個性豊かだものね。』
「あぁ!特にマルコとサッチの頭とかね」
『アハハ!怒られるよ?』
「大丈夫だよ、今2人ともいないし」