第7章 魚人島
「ジンベエ親分様はじめ、犯人様を除いてこの事実を知っている方は誰も居られません。
わたくしもその日は人間の海賊の方がお母様を手に掛けたのだと思っておりました。」
しらほしは眠ったメガロを撫でながら続ける。
「この子が…メガロが、後からこっそり教えてくれました。
犯人様は、、、
犯人様は、ネプチューン軍の兵士であり、人間の海賊の方を犯人に仕立て上げたのだと。」
『しらほし…』
「…お母様は最後に、犯人が何処の誰であれ、決して怒らないで欲しい、憎しみに囚われないで欲しい、と、、、そう仰られました。」
しらほしはメガロを撫でていた手を退けて、シーツをキツく握った。
「…海賊の方は本物の犯人様によって殺害されておりました。
ですから、、ですから、犯人様が海賊の方だと思っていた時は、ただ悲しいだけでした。
ですが…」
下を向いて、肩を震わせながら話すしらほし。
何も口を挟まずに、ただその続きをじっと待つ。
「…ですが、
まだ本当の犯人様がご存命であり、この魚人島の何処かにいらっしゃると思うと…
この8年間、少しだけ、、、本当に少しだけ、その方のことを恨んでしまうのです。
お母様はそんなことを望んでおられないのは分かっているのに、、どうしても許すことはできないのです。」
僅かに見える髪の影から、しらほしが唇を強く噛み締めているのが見えた。
しばらくそのまましらほしの鼻を啜る音だけが部屋に響いた。
ひとつ、彼女が息をつくと、静かに話し始める。
「…このことをお父様やお兄様達に話したら、きっと皆さんは犯人様を探し出し、憎しみや恨みに囚われてしまう。
だから…わたくしは、誰にも申し上げておりません。
でも、ずっと此処に1人でいると、わからなくなるのです。
本当にそれでいいのか。
わたくしの選択は間違えているのではないか、と。
そう思えてならないのです。」