第7章 魚人島
「ふふふ、サッチ様はそんなにパンに似ていらっしゃるのですか?」
『うん!似てる!!とっても似てる!!!
でもね、周りの兄さんたちがフランスパンって言うといつも怒るの。』
「そうなのですか?」
『うん。
本人はとってもお気に入りなんだって。
私も好き!
あれがないサッチ兄さんなんて寂しいもの。』
私がそう言って笑うと、しらほしとメガロも笑う。
他にもたくさんたくさんお話をして、お腹が痛くなるくらい笑って過ごした。
いつのまにかもう夜で、メガロは鼻から風船を出しながらスヤスヤと眠ってしまった。
『ふふ、メガロ寝ちゃったね。』
「はい。今朝は菜々美様がいらっしゃると聞いて早起きしてましたから。」
『そうなの?嬉しいな。』
私は少しざらざらするメガロの肌を優しく撫でた。
「…菜々美様。」
『ん?なぁに?…!』
名を呼ばれて振り返ると、そこには涙を流さず、ひどく悲しそうな、寂しそうな顔をしたしらほし。
その姿は儚くて、胸の奥がキュッとなるような、そんな姿だった。
「…菜々美様は、わたくしのお母様のお話しをお聞きになったのですよね。」
『うん…』
忘れもしない。
「…わたくしのお母様は、本当は、、、本当は、人間の海賊の方の手に掛かったわけではございません。
お母様は、、、ネプチューン軍の兵士の凶弾に倒れられたのです。」
そう言って顔を歪めるしらほし。
その顔は、悲しみや苦しみ、悔しさや寂しさ、そして少しの怒りと憎しみが混ざったような、、、そんな顔だった。
そんなしらほしを見ても、わたしの口から出たのは間抜けな声。
でも、本当に、本当に、、、それだけしか咄嗟に声は出なかった。
『…ぇ、』