第7章 魚人島
「菜々美様はこの国のお話をお聞きになられたのでしたよね。」
『うん。』
「では、わたくしも菜々美様のお話聞いてみたいです!
以前は地上のお話をたくさんお聞かせくださいましたから、今度は菜々美様のことをお教えくださいまし。」
『私?』
「はい!」
『うーん、、、別にいいけど…あんまり話せることないよ?』
「大丈夫です!」
しらほしは尾ビレをゆらゆらと揺らしながらそう言う。
『じゃあ、少しだけ…
私が父さんの船に乗ったのは1ヶ月と少し前くらい。
それまでは何をしてたかわからないの。』
「?」
『私、それ以前の記憶がなくて、、、何も覚えてないの。』
その時のことは何度聞いても覚えてない。
私の記憶はあの牢の中から始まってる。
「ふぇ…申し訳ありません、、そんなこと知らずに…」
『あぁ!大丈夫!大丈夫よ!!
泣かないで!』
しらほしはうるうると瞳を揺らす。
「ですが…」
『うーん、、、私が薄情なだけかもしれないけど、記憶がないからってそんなに悲観はしてないの。
周りに私に忘れられた人がいる訳でもないし、、、』
「そうなのですか?」
『うん。
マルコ兄さん達が言うには、本当に突然船に現れたらしいし、、、
わからないものはわからないから気にしようがないの。
だから気にしないで。』
私がそう言って笑うとしらほしは安心したように話しかけてきた。
「突然船の上に現れたのですか?」
『そうらしいの。
私はその時眠ってて覚えてないんだけど、なんか誰かの血を頭から被ったみたいだったって聞いた。』
「血?」
『うん。
私は怪我してなかったから多分返り血だろうって兄さんが言ってた。
覚えてないからなんでそうだったのかは覚えてないんだけどね、』
しらほしは不思議そうな顔をして話を聞いていた。