第7章 魚人島
「ッ、、、ジンベエ、菜々美に何をした。」
答えによっては容赦しない。
そんな勢いで俺はジンベエを睨みつけた。
「…菜々美さんに魚人島の歴史を話した。
…オヤジさんの判断じゃ。」
「オヤジが?」
「…今話すべきじゃとオヤジさんは言っておった。」
…確かに、いつかはこの世界の薄暗いことを目の当たりにする日が来るだろう。
その前に教えてやるのが菜々美のためであることは兄としてもわかっている。
ただ、、、今の不安定な菜々美には早すぎる。
やっと笑うようになった菜々美の顔を曇らせたくない。
そう思ってずっと先延ばしにしてきた。
それをオヤジは今言うべきだ、と、、、
「…儂はこれからオヤジさんに報告に行かねばならん。
本当は菜々美さんを城に連れ帰るよう言われておったが、、、菜々美さんが泣いて嫌がるもので…」
「…そうか、、、助かる」
「いえ、、、
…儂が言うのも変な話ですが、、、菜々美さんを頼みます。」
「あぁ。
ありがとよい。それと、、、悪かった。」
俺はそのままジンベエを見送った。
ーーー
ーー
ー
「魚人島の歴史を…」
「…そういうことか、」
目の前の2人は苦い顔をして少し俯く。
魚人島の悲しい歴史はこの船に乗るなら誰もが知っている。
だからこそ、この島では自分たちの言動にはいつもの10倍、いや、100倍気を使う。
「…そういうことなら、菜々美が城へ行きたがらない理由は分かる気がするな。」
「なんだ?」
イゾウがそう言うと、サッチは頭に疑問符を浮かべながら問いかける。
…全く鈍いやつだ。
「菜々美は人魚姫と友達なんだろう?
そんな歴史を聞いて…ましてや彼女の親は人間に殺されてるんだ。
そんなすぐに会いに行けるわけがない。」
サッチは思い至ったように、そうだな、とひとつ呟いて黙り込む。
誰も言葉を発することなく、しばらく俺たちはそのまま立ち尽くしていた。