第7章 魚人島
「お、おい、、、マルコ…菜々美どうしたんだよ…
やっぱり俺のせいか?俺があんなこと言ったからか??」
「うるせえよい、サッチ。
ちょっとは黙ってろ。」
昨晩オヤジにも怒られてしばらく吊るされていたからか、随分と反省したらしいこのフランスパン。
今日は一日中菜々美に許してもらえるかとソワソワしていた。
晩飯も菜々美用にかなり張り切って作っていたようだが、、、当の菜々美があの調子じゃなぁ…
「マルコ。」
「イゾウ…どうだ菜々美の様子は。」
「ダメだ。部屋の前で声をかけても返事すらしねぇ。」
「そうか。」
「…ジンベエはなんか言ってたか?」
「あぁ、それなら、、、」
俺はジンベエから菜々美を受け取った時の様子を思い出す。
ー
ーー
ーーー
ん?あれは…ジンベエと菜々美か?
遠くの空にカメタクシーが見える。
カメタクシーはモビーの横っ腹に着けると、背中からふらふらと生気なく菜々美が降りてきた。
「!?菜々美どうしたよい!」
両肩を持って菜々美と無理矢理目を合わせると、俺のことなどまるで見ていないような曇った瞳。
そしてそこから細く流れる涙。
一向に途絶える様子のないそれは本物の絹のように繊細で美しい。
しかし、嗚咽ひとつも漏らさず呼吸も穏やかなまま、静かに涙だけを流し続ける姿はどう見ても普通ではない。
『…なんでもない。』
「なんでもないわけあるか!…ジンベエ!!」
「…」
俺は答えようとしない菜々美に痺れを切らし、ジンベエの方を向く。
ジンベエも顔を歪めるだけで何も語らない。
『…』
「!おい!菜々美!!」
『…ごめん、今日はもう、休む。』
菜々美はそう言って俺の手からするりと抜け、覚束ない足取りで部屋へ歩いていった。