第7章 魚人島
「…そして、また時間が少し経った頃。
天竜人を乗せた難破船が魚人島へと流れ着いた。
船は激しく損傷し、天竜人本人も虫の息。
誰もが其奴を殺そうとした。」
『っ、』
奴隷たちを好きなようにしてきた天竜人。
…確かに、奴隷だった方々は許すことができないだろう。
「しかし、オトヒメ王妃は身を挺して天竜人を守った。
元奴隷たちの心の叫びを知りながら、子供たちに恐怖と憎しみを植え付けないように、と。その場を収めた。」
『…』
なんて人…
そんなにも心の綺麗な人がいるだろうか。
「…天竜人の治療を終え、奴らが地上へと帰るとき、オトヒメ王妃はその船に同乗すると言った。」
『え、、、どうして…』
「交渉のためじゃ。
そして王妃は天竜人を説得し、やっと希望の光を手に入れた。
王妃が持ち帰った紙は天竜人の一筆。
魚人族と人間との交友に賛同する、という旨の紙。
それを持ち帰り、地上への移住が現実的なものになり始めたとき、今まで一枚も集まらなかった署名が集まり始めたのじゃ。」
『!』
「…7年にも渡るオトヒメ王妃の苦労が実を結んだ瞬間じゃ。」
オトヒメ王妃。
本当に凄い人。
たったひとりで7年間も戦って来ただなんて。
「…じゃが、いつも悲劇は突然訪れる。」
ジンベエ親分は俯いて続けた。
…しらほしはお母様が亡くなったのは8年前だと言っていた。
8年もあって、まだ魚人島が深海にあるってことは、、、きっと上手くいかなかった理由があるのだろう。
私は意を決して次の言葉を待った。