第7章 魚人島
「…しかし、人身売買の他にも人間と魚人族との間には深い溝があった。
菜々美さん、オヤジさんの船にはナミュール隊長がおるじゃろう。
初対面はどんなものだったか聞いても良いか。」
『ナミュール兄さんとは…あ、、、』
ナミュール兄さんのことを病人だと勘違いして大騒ぎした記憶が頭を過ぎる。
今思えばなんだか恥ずかしくて思わず俯いてしまう。
「?どうかされたか?」
『あっ、いや…えっと、、、
ナミュール兄さんのこと、ですよね…
あのお恥ずかしながら…私ナミュール兄さんと初めて会った時病人扱いして大騒ぎしてしまって、、、』
「病人?」
『はい、体温も低かったし、顔色も悪かったから、、、大変だって駆け回ってマルコ兄さんとサッチ兄さん連れ回して…』
だいぶ恥ずかしいと思いながら話したけれど、親分さんの反応がなくて不安になる。
…どうしよう。なんか地雷踏んだかな、、、
チラリと顔を上げるとキョトンとした顔の親分さん。
と、次の瞬間
「ワッハッハッハ、それは予想外。
初めての魚人族に嫌悪感を抱かんかったのか。」
『え?嫌悪感??』
「…人間は魚人族を嫌っておる者が大半じゃ。
見た目が異なると排除したくなるのが人間の性。
遺伝的な考え方が異なる故に起こることじゃ。」
親分さんは自分の指の間の水掻きを撫でながらそう言う。
『私には嫌うという考えがなかったです。
確かに驚きはしたけど、、、それはナミュール兄さんだけが特別じゃなくて、父さんやブレンハイム兄さんみたいに大きい人を見た時も同じでした。
大きな人も魚人も私は見たことも聞いたこともなかったから…
…それに、みんな優しかったから、、、嫌いになるわけないです。』
私がそう言うと、親分さんは柔らかく笑って、そうか、とぽつりと呟いた。
「…かつては魚人族と人魚族は人間に魚類と分類されていた歴史もあるほどに、人間は魚人達を蔑み、疎んできた。」
『魚類…』
「魚人島の歴史は常に差別との戦いじゃ。
いつの時代も儂等が堂々と地上で過ごしたことはない。」
私は思わず膝の上で握った手を硬く握った。