第7章 魚人島
珊瑚の森を抜け、さっきの開けたところに出る。
奥の方に白い石でできたお墓が見えた。
「…ここに王妃が眠っておられる。」
『…』
ジンベエ親分は私の斜め後ろに座り、目を閉じた。
私はしらほしから預かった手紙を墓前に置きながら言った。
『…オトヒメ王妃様。
お初にお目にかかります。黒咲菜々美といいます。
しらほしからお手紙を預かって参りました。
…こちらにお納めしますね。』
そして私も一歩下り、墓前に手を合わせて正座した。
オトヒメ王妃。
しらほしのお母様。
私には母の記憶はないけれど、しらほしのような優しくて心まで美しい方だったのだろう。
亡くなってから8年間1度も会いにいけてないと言っていた。
王妃様もきっとしらほしに会いたいだろう。
王妃様。
しらほしはとても優しく、強い子です。
きっと貴方のように。
王子様方やネプチューン王がいつも守っておられます。
あの塔から出ることはまだ叶いませんが、いつか私が必ずタイヨウの元へ共に行きます。
…私ごとですが、私はしらほしに友と呼ばれてとても嬉しいです。
差し出がましいようですが、私も友人として彼女を守り、支えていきたいと思います。
私は胸の内で王妃へ向けてのご挨拶からお礼、しらほしのこと、
沢山のことをお話しした。
…すべて伝え終えると顔を上げ、後ろを振り返った。
ジンベエ親分は私を待っていてくれたようで、柔らかく笑うと、お墓を後にし、少し離れた珊瑚の上に腰掛けた。
私も向かい合って珊瑚の上に座る。
「…菜々美さん。
少し、昔話をしようと思うんじゃが、よろしいか。」
『はい。もちろん。』
私は静かに親分さんの言葉に耳を傾けた。