第7章 魚人島
「オヤジ。」
「ビスタ…」
オヤジは俺の腕の中に眠る菜々美を見て、事態を把握したらしい。
オヤジの差し出す手に菜々美を預け、俺は向かいに座るネプチューン王へと向き直る。
「しらほし姫もご無事です。
今は菜々美同様眠っておられるのでフカボシ王子は起きるまで共にいる、とのことです。」
「…そうか。わかった。礼を言うんじゃもん。」
「そんな、滅相もない…
では俺はこれで失礼します。」
俺はなんとも言えない表情をした父親2人の元を後にし、向こうでソワソワとこちらを見ている長男の元へ向かった。
「ビスタ!菜々美はどうしたんだよい!
意識がないのは何故だ!」
あーあー、やっぱり、か。
俺が抱いてきた菜々美は眠っているだけなのだが、、、
いつもは冷静沈着なコイツも菜々美相手になるとこうだ。
「落ち着けよマルコ。
お前がそう質問責めにしちゃあビスタも困る。」
マルコの肩に手を置きながらそう言うイゾウ。
ま、怪我してたなら真っ先にマルコの元に駆けてきただろうから、大事には至っていないことは分かっていたのだろう。
…そういえばコイツが慌てているのは昔おでんが乗ってた時以来ほとんど見てないな…。
「菜々美に怪我はない。今は泣き疲れて寝てるだけだ。」
「怪我がないのは何よりだが、、、何があったんだよい。」
マルコは多少落ち着きを取り戻しながらも眉間に皺を寄せてそう尋ねる。
「人魚姫は訳あって海賊に狙われてるのは知ってるな?
あの音と揺れはその海賊による攻撃だ。
普段は硬い扉に阻まれて姫は安全らしいんだが、今回はたまたま当たりどころが悪かったらしい。
扉の枠が歪んで少し隙間ができていた。
それで姫と菜々美は助けを呼んだんだ。」
「…そうか。」
マルコとイゾウは納得はしたが、眉間の皺はそのままにオヤジの腕の中で眠る菜々美に目を向けていた。