第6章 海底10000メートルの楽園へ
「あ!いた!!菜々美大丈夫か?」
「サッチか。大丈夫だよい。
明かりはまだか?」
「すぐ付けるって言ってたからそろそろつくはずだ。」
暗闇の中、サッチ兄さんはランプも持たずスタスタと歩いてきた。
私の視界に入るようにマルコ兄さんの隣に座ると、マルコ兄さんの手を掴んでいた両手のうちの片手をキュッと繋いでくれる。
『サッチ兄さん、なんでここに居るってわかったの?』
「ん〜?そりゃ、もちろん、愛の力だな!
俺は菜々美がどこに居ようと絶対に見つけられるセンサーがついてるんだ!!」
「…何馬鹿なこと言ってんだよい。」
サッチ兄さんは得意げに胸を張ってそう言うが、マルコ兄さんは呆れ切った顔だ。
『あ』
「お!ついたな!!」
甲板に明かりが灯り、周りが見えるようになっていく。
みんなちゃんといる。
『うわ!!!』
ふと、横を見ると信じられないくらい大きな口の魚。
ぎょろりとした目には光がなくて、白く濁った目が怖い。
「深海魚だ。あれは揚げて食ったら美味いな。」
「深海の魚は目が退化したものが多いんだよい。
逆に進化したやつもいるが、、、お、あそこにいるのは大王イカだな。」
そんな説明を横で2人がしているが、正直耳に入らない。
その魚以外にも、なんかブヨブヨしたスライムみたいなやつもいるし、でっかいイカもクラゲもいて心臓がバクバクいってる。
表層の魚たちと違って、ここの魚たちは怖い。
『あっ!』
口の大きな魚がぶよぶよした何かを食べた。
白いぶよぶよは紫の液体を出しながら咀嚼されていく。
ビュッ!
『!?』
と、ぶよぶよを食べている口の大きな魚に大王イカの脚が絡みつく。
魚は苦しげに顔を歪ませ、大王イカがさらに力を強めると身体がおかしな方向に折れて力なく浮かんだ。
『…』
「…菜々美、、、大丈夫か?」
「…刺激が強すぎたか。
部屋に入れとくべきだったかねぃ、、、」
私は目を逸らすこともできずに、魚とぶよぶよが大王イカに食べられていく様をずっと眺めていた。