第6章 海底10000メートルの楽園へ
「「「うぉぉぉお!!!」」」
『っ!』
目を瞑っててもわかる。
船がぐらぐらと揺れて、多分船首が下を向いている。
重力のかかり方がいつもと違って、甲板のものがゴロゴロと転がっている。
「…大丈夫か?」
『…!ぅん、、、っ!!!』
心臓が浮くような少し嫌な浮遊感。
その時間は今まで感じたことが無いくらい長くて、少し怖い。
兄さんの私を包む体温がなんとか私を持ち堪えさせる。
「深層入るぞォ!!」
グン!
ドン!!!
と、掛け声の直後、下を向いていた船首が前を向き、落下していた船は海の中で浮かんで、さっきのように前に進み始めた。
『…はぁ、、はぁ、、、、、終わっ、た?』
「あぁ。表層海流から深層海流への下降海流は終わりだ。
あとはこの流れに乗って海溝の中に入れば到着だよい。」
まだ足がガタガタしてて立てない私の横に座ってマルコ兄さんはそう言う。
『…兄さん、耳が変……』
「あー、、、急に深く潜ったからな、水圧が急に変化したからだろう。
耳抜きできるか?」
『うん。』
私はマルコ兄さんに背を向けて、鼻をつまんで耳抜きをする。
カポリという音がしたあと、唾を飲み込むと違和感がなくなり、周りの音もちゃんと鮮明に聞こえるようになった。
「治ったか?」
『うん。』
「…じゃあほら、見ろよい。
これが深海だ!」
『っ!!!』
落ち着いて顔を上げると、さっきとは違った景色。
真っ暗で目の前のマルコ兄さんの他には何も見えない。
『…兄さん、暗い……手、離さないで。』
目がまだ慣れなくて、声は聞こえるのに誰も周りに見えなくてなんだか怖い。
私は手探りでマルコ兄さんの手をみつけて絶対に離れないように両手で握る。
「大丈夫だよい。もうすぐ明かり付けるはずだ。」
マルコ兄さんはもう一方の手を私の手の上に重ねて、安心させるようにそう言った。