第6章 海底10000メートルの楽園へ
『寒っ!』
「…だいぶ冷えてきたからな、、、そろそろか。」
『マルコ兄さん、不死鳥になって背中に乗せて?
不死鳥の時の背中、あったかいもの。』
本当はお腹がいいけど、お腹にぎゅうってするのはダメだって言うから、背中に乗せてもらいたくてそう頼む。
初めは少し考える仕草をしたマルコ兄さんだけど、私がふるりと震えると、兄さんはすぐに不死鳥になってくれた。
「"滝"が見えたぞぉ!!全員しがみつけ!!!」
『……?滝???』
海の中なのに?滝??
「見てみるか?」
『?うん…』
船の中腹にいた私たちはマルコ兄さんの背中に乗って、父さんのいる船首近くへと飛んで行った。
ふと前を見るとそこには大きな大きな、、、
『…本当に、滝がある……』
「正確に言えば海流だがな。
さっき言ってた、深海へ沈み込む海流だよい。」
『え!…じゃあもしかして私たち今から、、、』
「あぁ。あの中に突っ込む。」
なんてないように言ってのけるマルコ兄さん。
私はサアッと顔から血の気が引いていくのがわかった。
…だって、、、
『…底、見えない、、、真っ暗…』
まるで滝壺。
およそ人が通る場所じゃない。
いや海の中にいる時点でそうなのだがそんなことより、、、
「入るぞォ!!!!」
『えぇ!?』
どこからか号令が掛かり、みんな船体にしがみついて衝撃に耐えていた。
私はあたふたと慌てるだけで何もできない。
「菜々美、こっちだ!」
『ぁ、』
手を引かれたと思ったら、目の前にはガバリとシャツの空いた逞しい胸板で、父さんのタトゥーが視界いっぱいに広がる。
「じっとしてろよい?」
上を見上げると、不敵にニヤリと笑うマルコ兄さん。
私を抱く力を更に強めて壁の近くにしゃがみ込む。
ゴン!
そんな衝撃音の後、私は兄さんの服を掴み頭を下げてギュッと目を瞑った。