第5章 新世界の航海
【私は、この男は世界政府ですら知り得ない、何かを知っていたのだと考える。
だから研究機関である科学班へと送った。
しかし、世界最高の科学者である、Dr.ベガパンクの頭脳を持ってしても、この男を完全に理解することは叶わなかった。
政府は不変を好む。
政府は時代がうねる度に何かに怯え、海賊王が誕生した時も酷く動揺した。
政府によってこの男が消されたのだとしたら、この男は、世界を揺るがすほどの何かを持っていた。
世界政府が恐れるほどの何かを。
だから消されたのだ。
だから情報も抹消されたのだ。
私はそう考える。
そして最後に、
私は空白の100年の研究に全力を注ぐ考古学者である。
私はこの胸のシンボルに誓い、考古学者として生きていくと決めたものである。
よって、この件に関わるのはこれで終いにする。
変に首を突っ込み、自分勝手に手を引くのは学者としては恥ずべき行為だ。
その償いとして、私はひとつ、この手記に忠告する。
もし、この男のように、何かの秘密を握る第2の人物が世界に生まれた時、その時は決して政府の元へ送らせてはならない。
今の歪んだ世界を変える鍵はどこに転がっているかわからない。
そのひとつである可能性が1%でもある以上はそれを摘んではいけない。
それを摘み取るべき人物が現れるその日まで、手折られぬように摘ませぬように育み守らなければならない。
…ただ、それだけしか言えまい。
後に、政府はこの男を"アルカナ"と呼んだ。
"アルカナ"意味は謎、そして神秘。
これこそ、政府が彼を理解できなかったことを裏付けるものではなかろうか。】