第5章 新世界の航海
次の日、私は多少体が重いけれど動けるようになるくらいには回復した。
身支度を整えた後、マルコ兄さんの部屋に向かう。
コンコンコン
『兄さん、私。』
ガチャ
「…菜々美、おはようさん。
もう身体はいいのかよい?」
そう言って私を迎え入れてくれるマルコ兄さん。
いつも眠たげな目は今日は優しい瞳に変わっている。
『うん。ちょっと怠いけどもう大丈夫。』
「そうか、よかった。
…無理はするなよい。」
『昨日はあんな態度取ってごめんなさい。
…あと、、ありがとう。』
「ククッ、気にするな。
野郎共の喧嘩に比べたら100倍かわいいもんだよい。」
私の頭をわしゃわしゃと撫でて、飯食ってこいと言って私を送り出した。
私はその足でイゾウ兄さんの部屋を叩く。
コンコンコン
『イゾウ兄さん、私。』
返事がない。
イゾウ兄さんに限ってまだ寝ていると言うことは無いだろう。
いつも私より早起きの人だ。
お酒に飲まれることもない。
『…いないのかな。』
私はあとでまた訪れようと決め、食堂へ足を進めた。
ガチャ
「お!菜々美!おはよう。
昨日風邪気味だったんだろう?もう大丈夫なのか?」
「菜々美、おはよう。」
『おはよう!サッチ兄さん、イゾウ兄さん!!
もう大丈夫だよ!』
食堂には探していたイゾウ兄さんとサッチ兄さんが喋りながらお茶をしていて、私に気づくとサッチ兄さんは私の分の朝ごはんが乗ったトレーを差し出してくれた。
私もイゾウ兄さんの隣に並んで食べる。
「クク、昨日よりマシになったんだな。
よかった。」
『うん。まだほんのちょっと怠いけど大丈夫。
…昨日はありがとう。』
「なに、大したことはしてない。」
イゾウ兄さんはふっと笑って湯気の立つお茶を流し込む。
「菜々美、今日は無理するなよ?
病み上がりが肝心だからな!」
ビシッと指を刺してそう言うサッチ兄さんは得意げに笑う。
『うん。わかった。』
私は素直に頷いた。