第5章 新世界の航海
『兄さん、、ありがとう。』
「あぁ。
…あ、そうだ。菜々美、うちの船は海賊船だ。
当たり前だが、不器用な野郎共しかいない。
マルコ初め、経験がないからやたら心配してるだけだ。
気恥ずかしいだろうが、俺が少し言っておいてやるから、それは許してやってくれ。」
『ふ、、うん。わかった。』
「よし、、、さ、起き上がった次いでだ。
サッチが粥作ってくれた。食えるだけ食って薬飲もう。
さっきマルコのとこ寄ったら、貧血の薬もくれた。
多少は楽になるだろうと。」
俺はテーブルの上の鍋の蓋を取り、菜々美にスプーンを持たせた。
菜々美はもじもじと動いてる。
『あの、兄さん、、、降ろして//』
「ックク、何故だ?
このまま食わせてやろうか?」
『や、恥ずかしい//』
ふと現実に帰ると、兄に膝に抱かれているこの感じが恥ずかしくなったようで、ベッドに戻ろうともぞもぞしている。
俺はわざとさらに力を強めた。
『ちょ、兄さん、、、』
「ん〜?」
俺は揶揄うように真っ赤になった菜々美の顔を覗き込むふりをしながら、ベッドの背もたれの下に枕を敷き、布団を一度剥いだ。
『兄さん!』
「ックク、悪い悪い。妹が可愛くてつい、な。」
菜々美が大きめの声を上げたタイミングで用意していたベッドの上に座らせて布団を腹までかけてやる。
腰と背中にちょうど枕が当たって悪くはなさそうだ。
「ほら、食べれそうか?」
『うん。お腹は普通に空くの。
ただ食べるよりも動きたくないってだけで。』
「そうなのか。
…じゃあ、俺はこれで出るから、食い終わったらそこの薬飲んで、トレーは机の上に置いとけ。
ゆっくり休めよ。」
『うん。』
「また、な。」
俺は菜々美の部屋のドアに手をかけた。
『イゾウ兄さん!』
「ん?」
突然呼び止められて顔だけで後ろを向く。
『あの、、ありがとう。
話、聞いてくれて、、、すごく楽になった。』
そう言って笑う菜々美はまだ弱々しいが、初めに見た時の不安定さはなく、安心したような顔だった。
「あぁ。またいつでもおいで。」