第5章 新世界の航海
『それにね、みんなはちゃんと、、お仕事とかも、やってるのに、、私だけ、こんな風に迷惑、、かけてる、のが、、、すごく、悔しくて、、、』
「あぁ。」
『…そらから、、ね、やっぱり、兄さん達に、、、こうやって、知られるのは、恥ずかしいし、、それがいやなら、ちゃんと隠すべきなのに、それもできなくて、、、も、全部嫌だぁ、、、』
俺の膝に乗せてから、菜々美は堰を切ったように涙を溢れさせて、思いの丈を素直に話してくれた。
俺は優しくゆっくりと背中をさすってやりながら話を聞く。
来て正解だった。
「菜々美、安心しな。
お前は全然嫌な子じゃない。
寧ろな、こうやって俺たちに心配かけまいと頑張れたいい子だ。」
『?なんで??』
「だってお前、俺たちに八つ当たりするのが怖くて1人でここにいたんだろう?
寂しくて痛いのによく我慢できたな。
それに、迷惑なんかじゃないさ。
ここ最近、お前はいつも俺たちのために頑張ってる。
そんな奴がちょっとやそっと休んだくらいで迷惑なんて思う奴はいねぇ。
そんなに小せぇ野郎がこの船に居ないことくらい、お前も知ってるだろう?」
『…うん。』
俺は菜々美の顔を見ることなく続ける。
「ただな、俺たちはやっぱり心配なんだ。
かわいい妹がこんな風に痛がってるってのは堪える。
特に、さっきみたいに1人で泣いてるのとかを見たらもう気が気じゃない。
だからな、これからは少しでも辛かったりしたら、俺のとこでもオヤジのとこでもいい。誰かに聞いて貰えよ。
泣いても喚いてもいい。1人で抱え込むな。」
『や、、、だめ、それは、、、八つ当たりしちゃうもん。』
「いいじゃねぇか、八つ当たり上等。
家族なんだ。気なんか使うな。
目に見えるところでそうやって感情を表してくれたら、俺たちも一緒に悩んで考えてやれる。
そっちの方が何倍も安心だ。」
『…本当?』
「あぁ。さっきみたいに言ってくれて俺は嬉しかった。
だからな、辛い時やきつい時ほど頼ってくれ。
俺たちはいつもお前の味方さ。」
俺はそう言って菜々美を抱く力を少し強めた。