第5章 新世界の航海
「お、マルコ。」
「…イゾウか、、」
前から歩いて来たのは菜々美のことで頭がいっぱいの長男。
自分には経験はない上、今まで無縁すぎたこの一件、どう扱っていいのかわからないんだろう。
「で、菜々美の様子は?」
「…飯を食うのも億劫なんだと。
俺との会話も無気力で、いつもの菜々美とは別人みたいだよい。」
「そうか。」
それだけ言うと俺はさっさと食堂へ向かう。
面倒でも少しは食わせて薬飲んだ方が早く楽になる。
「どこ行くんだよい。」
「サッチに粥貰ってくる。」
「…菜々美、動きたくないって言ってたよい。」
「まぁ、見てろって。」
うちの長男は優しいからな。
菜々美に断られたら何もできないんだ。
ちと、俺も手ェ貸してやるか。
「サッチ、生姜刷った粥くれ。」
「菜々美にか?」
「おう。柔めな。」
サッチは分かっていたように準備してあった鍋を火にかけ、くつくつと煮る。
普通の粥でもコイツの手にかかれば何百倍も美味くなるからほんとに不思議だ。
「ほら。あと白湯な。
薬飲ますんだろ?」
「…気づいてたか。」
「そりゃ、マルコ見てたらな。サッチさんを舐めんなよ?」
「あぁ。伊達にこの船一の女好きやってないな。」
「な!?モテる奴にはわからねぇんだ!!」
ギャーギャーと喚いてるサッチにひらりと手を振って俺は粥の乗ったトレーを片手に菜々美の部屋へ向かった。
菜々美に限らず、あぁ見えてサッチは人を良く観察している。
実は少しだけそう言うところを尊敬してたりする。
絶対に本人には言わないが。