第5章 新世界の航海
コンコンコン
「菜々美?起きてるか?」
…
ガチャ
悪いとは思いながらも勝手に部屋に入る。
以前は空き部屋で木の匂いが立ち込めていたが、もうすっかり菜々美色に染められた可愛らしい部屋。
と、ベッドが丸く膨らんでいるのを見つけた。
俺は足音を立てずに近づき、顔だけ外に出して丸まっている妹の様子を伺う。
眉間に皺を寄せ、誰からのプレゼントのぬいぐるみをキツく抱きしめていた。
さっきは立ちくらみを起こしていたから、恐らく貧血も少しあるのだろう。
俺は手に持ってきた小さめの湯たんぽを布団の中にそっと忍ばせ、子電伝虫と机にあった裏紙に一言メモを残してその場を後にした。
…長く海賊やってると血の匂いに敏感になる。
その可愛らしい部屋には似つかわしくない、鉄の錆びついた臭いが微かに鼻孔を駆けた。