第5章 新世界の航海
カラァン!カラァン!!
『え?なんのおt「前方に風の塊!嵐だ!!全員配置につけ!!」
『あ、、、』
聞き覚えのない鐘の音と同時に、甲板にいた船員達が一気に動き出した。
船内に入る人、船内から出ていく人、みんな走って迷いなくそれぞれの配置についていく。
突然のことにぼうっと呆けていると、力強く肩を掴まれてびくりと肩が揺れる。
「菜々美!
早く船内に戻れ!!」
『さ、ち兄さん…』
「前に教えたろ!鐘がなったらすぐに部屋に戻れと!
怖かったらオヤジの部屋に行け!!
何があっても甲板へは出てくるな!!」
サッチ兄さんは私の肩を抱えたまま、人が入り乱れる甲板を抜けて船室へつながるドアを開き、私を中に入れた。
私がハッとして自分の部屋に向かうのを見届けると、サッチ兄さんは風が強くなっていく甲板へ戻っていった。
グラリ
『きゃっ!』
船体が大きく傾いて転んでしまう。
嵐って、こんなに大きな船が傾くほどなの…
ピカッ!ゴロゴロ!!!
雷鳴が轟き、雨は容赦なく窓を打ち付ける。
自室で1人、布団の中でやり過ごそうとしていたが、どうしても不安で怖くて、私は父さんの部屋に続く廊下に出た。
ぐらぐらと揺れる不安定な中、揺れが少ない時を見計らって前に進む。
ガタガタと震える手を大きな扉に取り付けられた私用のドアにつき、それを押した。
ガチャ
『とうさん、、、』
「グララララ、菜々美か。ほら、こっちに来い。」
私は父さんの姿が目に入ると、勢いよく広げられた腕の中に走っていった。
父さんは私を抱き上げて優しく笑う。
「なんだ、1人は怖かったのか。」
『うん…』
「大丈夫だ。これくらいの嵐で沈むモビーじゃねぇ。」
『うん…』
「お前の兄貴達も大丈夫だ。
あんな馬鹿どもだが、海との付き合い方は全員ちゃんとわかってらァ。」
『うん…』
「嵐から抜けるまでここにいろ。」
『うん…』
私は父さんの鼓動と体温を感じながら、嵐が過ぎ去るのをじっと待った。