第4章 初上陸
「…爺さん。ここに書いてあること、本当か?」
マルコがそう言って店主に差し出した本は分厚い歴史書。
だが、その中には小さく切れ込みがあった。
マルコはそれを見つけ、その切れ込みを捲ると分厚い歴史書の中から文庫本ほどの大きさの文字で埋め尽くされている薄い紙の束が出てきた。
店主はその紙の束を懐かしげに眺めて答える。
「あぁそれか。
…本当かどうかは誰にも分からんよ。」
しわがれた声を出してそう答える店主。
それに目を向くマルコ。
「…なんでこんな本がここに、、、」
「最もな指摘だ。
普通、こんな文章見つけたら即刻政府に消される。
だからこんなふうに隠した上で、ここにあるんだ。」
「どういうことだよい。」
マルコは訝しげな視線を店主に送る。
「その筆者は恐ろしいほどに賢かった。
それこそ、世界一の学者だ。…もう死んだがね。
だからこそ、白ひげの傘で守られていたここに残した。」
マルコは無言で続きを待つ。
「自身の故郷の方が、それを調べるのにはずっとうってつけだったが、、、そんなことをすればこの本を後世に残すことはできない。
だから外へ出したんだ。」
マルコは懐から眼鏡を取り出し、隠すように何ページにも渡って記された手書きの文字を辿った。
「俺は歴史書の類はあまり読んだことはないが、、、歴史書ってのはどれくらい正しいものなんだ?」
「…歴史書なんて、胡散臭いやつばっかりだ。政府のやつがねじ曲げた歴史書ばかりでどれが本当の歴史かなんてわかりゃしない。
信用のできる歴史書なんて、この世にはない。」
「…そうか。」
「…だが、儂はその手記は信じられるものだと思う。
それは歴史書ではない。
それはその筆者の警告文、そして予想。
前半に記されている事実が本当かどうかを確かめる術はないが、後半の筆者の警告文と予想だけならば、信じ難いが、儂は信じようと思える。
…世界政府とは、それほどの組織だ。」
店主はそれだけ言って、机上に置かれていたその本をマルコの胸に押し付けた。
「それはやる。あそこのお嬢さんの分の本も適当に持っていってくれて構わない。」
「いいのかよい?」
「あぁ。」
「ありがとよい。」
本の筆者は、西の海のオハラ、クローバー作。