第4章 初上陸
「オメェは今から一度部屋に戻るんだろう?」
『うん!昨日そのまま寝ちゃったんならシャワー浴びたい。』
「なら、そのついでにマルコ呼んできてくれるか?」
『わかった!
じゃあ、またね、父さん!』
「あぁ。」
菜々美を自身の体から下ろすと、何かが足りないような変な感覚に陥る。
…近くにいて、安心していたのは俺の方だったか。
眠っていた菜々美を思い出す。
あまりに小さい体。
呼吸のたびに胸は上下して、生きていることはわかっているのに、確認せずにはいられないほどか弱い存在。
この世界では菜々美の命を奪うことなど、どれほど簡単なことか…
心臓の鼓動が安心すると言っていた。
俺も同じだ。
俺のものよりも早く波打つそれ。
小さいながらも、必死に生きようと動くそれ。
起きている時はいい。
眠っているときは、どうもあの、不安定な菜々美の生を実感してないと安心できない。
【かあ、さん】
…例えお前が求めるものが俺たちでなくても、俺ァずっとお前を愛そう。
何があろうと、永遠に。