第4章 初上陸
私は酒瓶のところまで歩いていった。
いや、、、待って、
『…大きい………』
酒瓶だけで私よりも大きい。
…持てない。
どう頑張っても持てない酒瓶。
諦めて父さんのとこまで戻ろうとしたが、不意に隣の酒瓶が宙に浮いた。
「ほらお嬢。オヤジに酌するんだろう?」
『イゾウ兄さん!ありがとう!!』
イゾウ兄さんは身体よりも大きな酒瓶を片手で軽々と持ち上げて笑っていた。
素直にお礼を言って、父さんのところまで行く。
「グラララ!
悪かったな。菜々美にはちとデカかったか。」
『うん…ちょっと無理だった。』
「!いや、そんなことないさ。
ほらお嬢、オヤジに注いでやれよ。」
『え、、、でも、私持てない…』
「大丈夫。持てるから。…ほら、」
?
イゾウ兄さんはニヤリと笑って私に酒瓶を持たせようとする。
父さんも盃を床に置いて、注ぎやすくしてくれた。
…無理だって…
『ふぅ………よいしょっ…?て、、えぇ!?』
持てた。
しかも、軽い。
横にいたイゾウ兄さんを見ると、両手をひらひらと振る兄さん。
下を覗いても、酒瓶の周りには足は無くて、周りには誰もいないことがわかる。
頭が疑問でいっぱいになって困惑していたら、父さんの声が耳に入った。
「オイ菜々美、焦らすなよ。
酌してくれるんだろう?」
『え?あ、、うん…』
ニヤリと笑う父さんの言葉に釣られて、私は酒瓶を傾けてとっても大きな盃にお酒を注ぐ。
八分目くらいまで次終わると酒瓶を立てて床に置いた。
???
酒瓶の周りをぐるっと一周回ってみるけれど、ただの大きな酒瓶だ。
???
父さんはそんな私に構うことなく、ガブガブと一息で大量のお酒を飲み干す。
「アァ。いい酒だ。
やっぱり娘に酌してもらった酒は一段と美味い。
今までで1番だ。ありがとうな、菜々美。」
『!うん!私のほうこそ、いつもありがとう!』
「グララララ!いいってこったァ!」
ま、いっか。
父さんに喜んで貰えたなら、なんでも。
私は父さんに背を向けてみんなの中へ走っていった。