第10章 第八夜
痛い
やめろ
触るな•••
そう言いたかったのに。
俺に触れながら 小さな声で謝り続けるカノに、そんな言葉をぶつけることは できなかった。
『やっ、カノ•••ダメ•••••』
ダメ•••と言いながら、カノの肩を押す手に 力は無い。
今もなお ゴメン、ゴメンと謝り続けるカノ。
俺はポツリと言葉を押し出した。
『────。』
カノの 驚いた顔が見える。
欺くことすら 忘れてしまったようだ。
カノ
謝るのは 俺の方なんだ。
ゴメンな。
その言葉を 言えるのは、少なくとも 「今」じゃない。
俺は 一瞬だけ 自嘲気味に笑い、カノへと手を伸ばした。