第10章 第八夜
『ーーーーー。』
悪い冗談だろ?
きっと、そう思ったのは俺だけじゃない。
滑稽なほど ポカンとした顔。
なぁ、カイト•••頼む、頼むから嘘だって言ってくれ。
俺は 赤いジャージの裾を握りしめた。
カイトは 穏やかな微笑を浮かべ、俺たちを見ている。
『ーーーーー。』
再び 唇から放たれた音は、まるで 呪詛の言の葉。
聞こえない
聞きたくない
俺が 呆然としている間に、正気に戻ったらしいキドやセトたちが、カイトを近くの部屋に閉じ込めていた。
犯罪って言えばそうかもしれない。
けど、仕方が無い•••と思う。
『サヨナラ、しようか?』
•••させない。
絶対に、させない。
扉が閉まる瞬間に見えたカイトの表情は、まるで『困ったな』とでも言うような 笑顔だった。