第9章 第七夜
?「久しぶり、カイト」
少女は、肩よりも少し長いくらいの髪を揺らして、フワリと微笑んだ。
俺は 口に溜まった生唾を音をたてて飲み込み、強く拳を握った。
『•••久しぶり、シロ。』
緊張。
俺とシロ以外は 誰も動かない。
好戦的なクロハさえ、ジッと見守っている。
彼女は 微笑を浮かべたまま、問いかけた。
シロ「•••幸せそうだね。」
敵意も好意も感じられないのが、とても気持ち悪い。
俺は 少し迷って、でも 正直に
『まぁ、ね。』
そう言った。
シロ「うん、本当に•••幸せそう。」
呟いたシロは、整った顔をぐしゃぐしゃと歪めて、俺を睨みつけた。
殺気。
なにも言わなくても、シロの思考がわかる。
殺す殺す殺す殺す殺す死ねシネ死ねシネ死ね殺したいコロシテヤル•••
凄まじい殺気が、不意に薄れた。
シロの唇が 美しい弧を描いて、コッチを見ている。
でも、見ているのは俺じゃない。
俺のうしろにいる みんなだ。
シロ「へぇ、隠してるの?隠してるんだ、隠してるんだね?せっかくのオトモダチなのに、隠しちゃってるんだあ。」
シン「隠してる•••って?」
眉を顰めるシンタローに、シロが無邪気で邪な笑顔を向ける。
シロ「やっぱり知らないの?信用されてないんだね。」
そう言いながら、シロは俺に近寄ってくる。
俺は 無意識的に後ずさっていた。
シロ「うん、いいよ いいよ すっごくいいね。」
俺の目の前に来たシロは、徐に手を上げて•••
『っあ•••?』
俺の「目」を引きずり出した。