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灰色噺〜ハイイロメモリーズ〜 『カゲプロ』の話

第9章 第七夜


ガヤガヤ ガヤガヤと騒ぎながら、俺たちはアジトへと向かっていた。


男子会のテンションをそのままに、ノンビリと歩く。



『異変』に気付いたのは、アジトへつくほんの数分前だった。


セト「•••••つけられてるっすね。」


『ああ、そうみたいだな。』


ヒタヒタ ヒタヒタと、かすかな足音が一定の距離を保ってついて来ている。

クスクスと 時折聞こえる密やかな笑い声が、余計に恐ろしい。


そっと 周りを見れば、みんなもそれに気付いているようで、緊張の色をにじませている。




ストーカー•••変質者だろうか。

それとも、今までに俺が潰した暴力団とかが復讐にでも来たのだろうか。


どちらにせよ•••もし、俺を狙っているのなら、つぼみやモモたちが危険に巻き込まれる可能性もある。



『カノ、あれにバレないように アジトまで帰れるか?』


カノ「ん? うーん、多分大丈夫かな。」


俺は なるべく感情を顔に出さないようにして、言葉を続ける。


『じゃあ、ヒビヤと2人で アジトに戻って、つぼみたちに 心配すんなってしらせて?』

カノは軽く唇を尖らせ、ポソッと呟いた。

カノ「僕たちは邪魔?」


『違う、適材適所ってこと。』


カノなら『敵』の目を欺けば、有る程度のことには対処できると思う。

ヒビヤがいれば、俺たちに 何かあっても見つけ出せる可能性が高くなる。

そして 全員が逃げたら、それはそれで面倒なことになりかねない。






まぁ、できれば ここで片付けたいんだけど•••ね。


周りにだけ聞こえる声で そう言うと、カノはコクリと頷き、ヒビヤの手を引いてアジトへ向かった。




ストーカー(仮)はいまだに俺たちのうしろについてきている。



何かを威嚇するような足音。




俺は それを聞きながら、少し歩くスピードを落とした。


俺はこのとき、選択を間違ったのかもしれない。

もし、少しでも早くアジトに戻っていれば。

もし、カノとヒビヤだけじゃなくて、全員をアジトへ帰していれば。



俺に これから起こることなんて、予想なんかつかなかった•••••本当に つかなかったんだ。
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