第5章 第四夜
ふと、 気がつくと さっきの大人たちは いなくなっていた。
手や足に 不思議な違和感が残っているから、多分 あいつらは撃退できたのだろうが•••
怒りにまかせて 暴れるなんて、俺もまだまだだな。
「あっ•••あの。」
『んっ?』
「助けてくれてありがとうございます。」
ウルウルと 目を潤ませながら お礼をする子供たちに、俺は ニコッと笑う。
『ハハッ どういたしまして。』
そう言うと、彼らも 俺に笑い返してくれた。
「おにいちゃん、おなまえは?」
『ああ、俺はカイトだ。』
「じゃあ、カイトにいちゃんって 呼んでいい?」
『っ!ああ•••!』
ヒトと触れ合うなんてことが あまりなかった俺は、その時 初めて 子供がかわいいと思った。
その日は、日が暮れるまで 彼ら•••••つぼみ 修哉、幸助と いっしょに 遊んだ。
「明日も遊ぼう!」って みんなは 言ってくれたけど、俺は夜の間に その街を去った。
理由は、この街に住んで ピッタリ一年が過ぎたからだ。俺はひとつの街に留まるのは一年までと決めている。
明日まで待とうかとも思った。でも、そうしたら きっと、明日も『もう一度』って 言って、この街を離れるのを 先延ばしにしてしまう。
街を去った 俺は、その後も いろんな街を 転々とした。
彼らと 会ってから 数年がたち、俺は 懐かしさから 再び、この街に足を踏み入れた。
きっと、あいつらは 俺のことなんて 覚えてないんだろうな。
そんなことを考えながら•••••