第15章 第十夜、丑の刻
『あんたたち、随分と変な格好してんのな』
囁かれた声に、僕たちの肩がビクリと震えた。
(この声は…!)
セトとほぼ同時に後ろを振り向くと、そこには…
カノセト「カイトにぃ?!」
『にぃ…?てか、あんたたち、俺のこと知ってんの?』
ポカンとした顔で僕たちを見つめるカイトにぃ。
彼も周りの人と同じように、地味な着物姿だ。
青灰色の着物は所々擦り切れ、日に当たると色味が変わる柔らかな髪は、なぜか真っ黒に染まっている。
頭の高いトコで結んでいるのに、それでも腰ほどまである髪は、カイトが小首をかしげるのに合わせてフワリと揺れた。
『おーい、聞いてる?お二人さん』
セト「えっあっ…!すみませんっす」
一足先に正気を取り戻したセトが、慌てたように謝る。
『ふーん…あ、もしかして南蛮の人?随分日本語うまいけど……誰に紹介されたの?』
カノ「えっ…なっ…えっ…?」
意味がわからず、混乱する僕たちを横目に、カイトは、まぁ、いいや。と呟いた。
『ゴメンね、せっかく来てくれたトコ悪いんだけど、今から仕事なんだ。君たちが滞在してる場所教えてくれたら、こっちの仕事終わらせてから向かうけど……どうする?』
……一瞬、カイトが異常なくらい色っぽく見えた。
ゴクリと生唾を飲みこむ。
カノ「…いや、それが…僕たちなんでここにいるのかわからなくて…実は…」
『あっ、ちょっとまって!』
説明を始めようとした僕を遮るように、ペシッと口をおさえられる。
『今、本当に時間無いから、ハイかイイエで答えて!』
カノ「えっはい!」
『君たちの滞在してる場所はこの近くにありますか?』
カノ「い、イイエ」
『ここら辺の地理はわかりますか?』
カノ「イイエ」
『じゃ、最後に…着物って持ってますか?』
カノ「…イイエ」
『んーー、じゃあ仕方無いな。こっちおいで』
カノセト「「…えっ?」」
そうしてグイグイと手を引かれた僕たちが、カイトに連れて行かれた場所は…