第15章 第十夜、丑の刻
セト「……ここ…どこっすか…?」
カノ「…さぁ、…どこなんだろうね……」
突然真っ暗になった視界。
それが治った時、僕たちが立っていたのは、随分と古臭い町だった。
いや、古臭いなんてものじゃない。
大きな通りを歩くのは、ちょんまげ頭の男や、地味な柄の着物の女。
洋服を着ている人もいるが、どれもヒラヒラ フリフリのもので、なんというか……古い。
セト「カ…カノ、もしかして俺たち…タイムスリップとか…してないっすよね…?」
カノ「い、いや〜。それはないんじゃないかなぁ?あはは…」
セトのセリフに、僕は欺く余裕すら持てずに、乾いた笑いを漏らした。
2人して呆然と立ち尽くしていると、妙なことに気がつく。
カノ「ねぇ、セト。もしかして…だけどさ?……他の人には僕たちの姿が見えてないとか……ないよね?」
まるで、江戸時代な雰囲気のこの町で、僕たちの服装はとても目立つ。
なのに、周りの人間はまったく気にする様子がない。
というより、まるで…僕たちが見えてないような…
セト「なにへんなこと言ってるんすかカノ…ま、まさか、そんなことあるわけないじゃないっすか…あはは…は」
セトも、さっきの僕と同じような、乾いた笑い声をあげたが、僕たちの周りを歩く行列の中に、その声に反応した人は、たった1人もいなかった。
カノセト「「…………………」」
なんとも言えない気持ちで黙り込んだ僕たち。
その背後から…
『あんたたち、随分と変な格好してんのな』
耳朶に触れるほど近くで声がした。