第2章 甘えん坊の特級呪霊
「 えっと…七海さん、その子供は? 」
「 説明は帰ってからします 」
離れることが無かった少女の姿をした呪霊を、
流石に全裸のまま居させるわけには行かない為にスーツを着させ、身体を隠してから抱き上げた。
此処から動く事ができるようになったらしく、
抱き上げて運んでも、嫌がる素振りはなく、寧ろ首に抱き着いて、猫のようにゴロゴロと喉を鳴らして擦り寄ってくるために呆れる。
補助監督には、特級呪霊は除霊したことを伝えたが、嘘のように思えて頭が痛い。
「 ママ…? 」
「 五条さんに確認して貰うまで、身柄は私が預かるだけです。いいですが、ママではありません。七海です 」
「 ママ! 」
「 …… 」
もう少し特級呪霊なら、会話が成立すると思っていたのだが、そんな様子が全く無い。
12歳前後の見た目だが、幼稚な部分は3歳にも満たないか。
姿と言動があってない事に、少しだけ気疲れをする。
あの帰りに、デパートで子供服を買い漁り、
ホテルに戻ってから着せ放置してるが、ずっと引っ付いて来る。
「 ママー! 」
「 違います 」
蛾の翅は消えたが、頭には蛾の触覚みたいなのが残ってる。
其れだけで、後は色素の薄い肌に、翡翠色の目と髪色という点以外は普通の女の子に思える。
言葉を否定をし、頭を撫でれば嬉しそうに目を閉じて、手へと擦り付くのを見ると、これが一撃で呪霊達を祓ったようには思えなくなる。
呪力を隠すのが上手い為に、一般の人間には姿は見えても、普通の子供に見えるだろう。
「 マァーマァ!マンマー… 」
「 っ、なにを…って… 」
頭に置いていた手に顔を寄せ、指を軽く噛んだ事にぱっと手を離せば、ムスッとした顔を見て察した。
「 嗚呼、お腹空いたんですか? 」
「 マンマー! 」
「 はぁー…呪霊でも、食べるんですか… 」
虫としての名残かは知らないが、お腹を空かせて騒がしいのは勘弁して欲しい為に、ホテルの冷蔵庫に入れていたコンビニのカスクードを取り出し、皿の上に置く。
「 ほら、食べていいですよ。私はお風呂に入るので… 」
目を離して何処かに行く…なんとなく、そんな事も思えず、
風呂に入ることにした。